空にはお月さま/「NHKみんなのうた」より

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 「気持ち悪い」というのが、私の記憶に残るか否かのポイントであるのかもしれない。この歌も、当時のみんなのうたの中では群を抜いた不気味さであった。
 「みんなのうた」といえば当時はまだ奇をてらった歌は少なく、学校で習うような歌が多かったのではないかと思う。なぜならば、いつも見ていたはずなのに、殆ど覚えていないからである。
 しかし、「空にはお月さま」は違った。暗いバックにぽつんとドレスアップした少女が立っており、指をならしながらビブラートを効かせた歌唱法で歌っていた。ハミング、もしくはスキャットというのだろうか、その「MUMUMUMU....」も、しっかり発音する独特な歌い方。バックには切り絵のようなアニメーションが歌詞に合わせて浮かんでは消えていく。 当時私は小学校高学年だったと思う。せっせと歌詞を覚え、友人とこの歌を歌い、指をならした。歌詞は「空にはお月さま」「鼻の下にはおひげ」といったように一見何も繋がりのないようなイメージの羅列が歌われていき、次にそれが実はひとつの世界で繋がっていることを示すように、一番最後に登場したものから一つ前のものに作用が及ぼされ、最後に「お月さまも、ゆれたー」としめられる。
 自分で歌うために歌詞を覚えた歌というのはなかなか忘れない。成長しても、頭に歌詞とメロディが丸ごと入っている。この歌も、みんなのうたでレコードになっていたりしないかと何か機会があるたびに探した。1度、違う歌手で録音されているものを見つけたような気がするが、それじゃあ意味がない、と買わなかった。そして、10年くらい前にCDにオリジナルの状態で収録されているものを買った。MUMUMUMU....も、記憶のままであった。

 だいぶ前になるが、ふと見た「おかあさんといっしょ」でけんたろうお兄さんの歌唱でこの歌が歌われているのを見た。みんなのうたで見てから四半世紀もたってから、この歌を子供番組で見ることになるとは思わなかった。この番組のスタッフも、子供の頃歌詞を覚えて指を鳴らしていたのだろうか。