奇跡の歌/山本リンダ

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 私がまだ10代の頃、「ひるの歌謡曲」で山本リンダの特集をしていて、それをタイマー(当時はぐるぐるっと回すキッチンタイマーの仲間のような大雑把なものを使っていた)で録音して聞いた。そのテープはかなり聞きこんだ。山本リンダと言えば、初期のヒットした露出過多の記憶しか無くて、「ウブウブ」「奇跡の歌」「真っ赤な鞄」などは初めて聞いたので、とても新鮮だった。 その中でも最もインパクトがあったのがこの「奇跡の歌」だった。山本リンダが「善」と「悪」の2役を演じるように歌う歌なのだが、歌詞の内容を聞くと、別に「悪」でもなんでもないのだ。奇跡が起こるって言ってるだけの人なのである。なのに何故こんな怖い歌い方をしていて、もう片方は怯えるのか?
 改めて考えたら、「奇跡が起ることを信じろ」じゃなくて、「私を信じろ、そうすれば奇跡が起る」という、霊感商法のようなことを歌っているような気がしてきた。

 ところで、私にとって山本リンダのテープは「楽しいテープ」で、「聞きごたえのあるテープ」だった。山本リンダは有名だし、万人が喜ぶテープに違いないと思っていた。 20代の初め、友人の会社のスキー旅行に誘われ、行き帰りの車で聞くテープを各自持参してくれと言われた。私はみんなも知っている楽しいテープとして山本リンダのBESTを持参した。 私のテープをかける順番になったのはかなり後の方だった。運転手はすっかり運転に疲れていた。私のテープは巻き戻っていなくて、かけてすぐ流れてきたのはこの「奇跡の歌」だった。運転手は、少し聞いて、「だめ、俺、これ」と言って止めた。 この歌は万人には受けないようだ。