深夜学園大作戦/長谷川諭

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 長谷川諭を好きになったきっかけは少年ドラマシリーズの「明日への追跡」だったと思う。それまで子役として見かけていても大して気に留めていなかったが、SFジュブナイルではとても引き立つ謎めいた顔立ちだった。顔立ちの系列で言うと「なぞの転校生」や「幕末未来人」等の星野利晴と同じであったとしても、美少年かどうかという点で断然長谷川諭が勝っている(と当時思っていた)。
 長谷川諭ファンは当たり前のように近くにいなかった。私は誰とも共有することもできないまま、彼の出演情報を収集していた。
 中学生の頃新潟は民放が2局しかなく、1つはTBS系列、そして、もうひとつはその他全部、だった。当然、TBS以外は放送してもらえない番組は多い。「ありがとう」シリーズは殆ど見れたのに、少年少女にとって重要な学園物などを健全に見ることはできなかった。
 長谷川諭が「ゆうひが丘の総理大臣」にクラスの優等生役で出ている、という情報は得ていた。ゆうひが丘と言えば中村雅俊主演の人気の学園ものだ。新潟では最初は放送していなかったが、少し遅れて、夜の11時半から放送され始めた。しかし、その時間枠では(中学生にとっての)深夜番組だ。学園物をそんな時間に見ろというのか?早寝早起きが信条のうちの親では、とうてい見せてもらえるはずがない。親が寝静まった後にこっそり起きだし、テレビのある部屋へ行き、イヤホンを使って見るしか手段はなかった。(ちなみに同枠で違う曜日に「プロポーズ大作戦」をやっていた。実はそれも同じ手段で後に見た。だって、なんだか楽しそうな番組だったから…)
 私は、ゆうひが丘ファンではなく、あくまで長谷川諭ファンだ。そんな親に隠れてテレビを見るなどという危険なことを毎回する必要は全くない。私はゆうひが丘の特集をしていた雑誌で「長谷川諭」メインの回を調べ、それを元に放映日を割り出した。
 私が見なくてはいけないのは、とりあえず第6話だった。そして、第20話。第6話は当時とても嫌いだった斉藤とも子(何故なら、長谷川諭の出演番組によくいるからだ)に長谷川諭が成績のことで嫉妬する話。第20話は「優等生と劣等生の熱い恋」というタイトルで、長谷川諭と藤谷美和子が恋愛をするという話だ。間違いなく遠藤君(役名)がたくさん見れるに違いない。私はとても期待してその放映日を待った。
 放映日。親は寝た。私も寝たふりをしてその時間を待った。うっかり寝入ってしまわないように気を付けながら、11時半になってTVの前に音をたてないようにして行き、イヤホンをセット。地方の深夜のコマーシャルの情けないことよ。
 第6話はあまり覚えていない。遠藤君が成績が落ちたことで陰険なことをする役だったからだろうか。もうひとつの20話の方は良く覚えている。ストーリーは(当然だが)藤谷美和子寄りで、かっこいい遠藤君を見せる番組ではもちろんなかった。優等生だから私服もかっこ悪く、成績が落ちたのがきっかけで恋が終わったようなこれまた情けない話と記憶している。でも、それでも私は、遠藤君がたくさん見れて嬉しかった。新潟以外に(おそらくきっと)住んでいるだろう他の長谷川諭ファンと同じように、彼を見れたのだから。

 その後にも主演回があった。その回はあるシーンだけ鮮明に覚えている。優等生の二人組がピンク・レディーを歌って踊るのだ。つまり長谷川諭が踊っていた。記憶はそれだけだ。夜中にがんばって起きて見たのに、あの姿はあんまりだ。

 ちなみに、この回のもう一人の優等生、岡村清太郎、ただものじゃなかったことに当時全然気づかなかった。また、高野浩之がゲスト出演したもあった。それはかなり後だったが、見落とさないように毎回サブタイトルをチェックした。やはり藤谷美和子と恋愛する話だった。長谷川君と高野君の夢の競演だった(はず)。

 「ゆうひが丘の総理大臣」が終了し、「あさひが丘の大統領」に長谷川諭は続投した。それを知ってとても喜んだ。優等生ではなく、いわゆる「ワルがき」の一人である。出番も多いに違いない。
 だが、優等生風だった髪型も役作りのためか劣等生風になり、見た瞬間「不細工」という言葉が頭をよぎった。実際、番組も人気が今一つだった。先生(宮内淳)のせいだといわれているが、長谷川諭は関係ないのか?

 長谷川諭を最後に見たのは土曜ワイド劇場だった。ストーリーも何も覚えていない。ただ、確か彼はベッドシーンを演じた。彼を見たのが久しぶりで気持ちが離れていたとはいえ、それはショックだった。少年ドラマシリーズの遠い目をする彼も、遠藤君も、もうどこにもいない。

 新潟という土地を大学入学とともに離れ、東京で一人暮しを始め、誰に何の気兼ねもなく自由にテレビを見ることができるようになった。ネットされていないという心配もない。そして、長谷川諭ファンだったこともいつしか忘れ、社会人になり、大学時代からの習慣で中古レコードを漁っていたある日、私は、中学生の頃、明星か平凡の歌本に載っていることを1度だけ見たことのある、彼の演歌のシングルを見つけた。「花がすり」(遠藤実作曲)である。
 懐かしさのあまり購入したが、1度も聞いていないし、多分これからも聞かない。

追記

  • 「優等生と劣等生の熱い恋」、新潟で放映されたのは1979年5月15日(火)であったようだ。
    (参考資料:中学2年の生徒手帳)
  • 1979年5月28日(月)コメットさんに長谷川諭が出ていたようだ。
    (参考資料:中学2年の日記)
  • 1979年8月18日(土)「熱中時代刑事編」に長谷川諭が出ていたようだ。
    (参考資料:中学2年の日記)
  • 中学1年の生徒手帳には、 長谷川諭のシングル「花がすり」の歌本の切りぬきが3枚、「若すぎた夏」の切りぬきが2枚挟まっていた。歌詞だけでなく、本人の写真がついているから持ち歩いていたのだろう。ちなみに、それら5枚の切抜きの裏は、「木ノ内みどり」「園まり」「岡崎友紀」「ザ・リリーズ」「加山雄三」だった。
  • 1979年7月21日(土)「スターアクション」に長谷川諭が出ていたようだ。(2001.7.3追記)

長谷川諭さんの情報があまりにもないようなので、昔の切り抜きに書いてあった情報を転記します。

質問:『つくし誰の子』(日本テレビほか)で活やくしている、長谷川諭さんのことを教えてください。
★本名 清水諭 昭和35年3月13日生まれ 中学三年生 身長163センチ 体重48キロ 東京都出身 家族はお母さんとふたりぐらし 劇団「若草」から芸能界へはいりました。
趣味はギターとドラムス。かなりの腕まえということです。もっぱらこの二つに、こっていてスポーツのほうはあまりやらないのだそうです。
 食べ物の好ききらいはありません。
 おしゃれなほうで洋服は自分でデパートにいって買ってくるそうです。
 好きなタイプの女の子は?という質問には、「まだ、女の人には興味ないなあ…」という返事。
 とにかく今は、高校受験で猛勉強中ということでした。
(2009.4.26追記)

【昭和スター倶楽部】プロマイドギャラリー 長谷川 論
(2013.1.8 追記)